子宮筋腫の手術でお悩みなら、子宮動脈塞栓療法(UAE)を検討しませんか?

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コラム

子宮動脈塞栓術UAE時に欠かせない麻酔と鎮痛方法について

 

子宮動脈塞栓術 UAE (Uterine Artery Embolization) を検討されている方が必ず心配される事の一つが術後の痛みについてです。

術後の痛みがあるか無いかは入院生活の質を左右する重要な問題です。UAEについて調べているとブログなどに術後の痛みがとてもつらかったという患者さんの声をよく目にすると思います。今回のコラムでは当院で使用している麻酔の方法とその入院中の体調、それから過去の麻酔と比べてどのように入院生活が良くなったかについて書きます。

UAE手術はお腹を切らずお腹の中で筋腫を壊死させます。筋腫を切除する婦人科的外科的手術ではお腹を切って(腹腔鏡手術でも少し切ります)子宮にメスを入れて体の外に筋腫を取り出しますので、術後の痛みは傷の痛みと考えて良いですが、UAEではお腹の中で筋腫が壊死するのと平行して強い痛みが発生します。この痛みは傷の痛みではありません。体の中で細胞が壊れていく時に発生する猛烈な炎症反応による痛みなのです。痛みを抑えたからといって治療効果が悪くなることはありません。ならば、痛みはできるだけ軽い方が楽です。

UAE後の痛みは急速に強まって行って急速にひいて行きます。塞栓物質によって血管を閉じられてしまうと、筋腫は約24時間で壊死に至ります。痛みはUAE直後から始まりますが、細胞は24時間かけて次第に壊れて行きますので、痛みも24時間かけて強まって行きます。その後ピークを過ぎた後、また24時間くらいかけて痛みは退いていきます。合わせて48時間の痛みをいかに抑えるかが術後の最重要課題です。

カテーテルを使ったUAE手術に要する時間は30分から1時間程度です。UAE終了時にカテーテルは動脈から抜いてしまいますので、カテーテルを抜いた動脈から出血しないために3時間の安静が必要です。安静が解除されたら自由に動いて良いので、治療はもう終わっていますから帰宅しても良いとも言えますが、ここから強まってくる猛烈な痛みを抑えるための麻酔・鎮痛が欠かせません。ここで使用する鎮痛薬は外来で処方されるような飲み薬や座薬や一時的な注射ではとても足りません。麻薬に分類される最高レベルの薬剤を使用します。しかも持続的に投与しなければなりません。UAEが入院で行われる理由はここにあります。術直後の2日の痛みを特殊な薬剤で抑える必要があるから入院となるのです。

当院では水木金土の3泊4日の入院でUAEを行っています。入院した水曜にはまず腕に点滴のルートを入れます。病院でよく見かける普通の点滴です。点滴のルートにモルヒネという薬剤をつなぎます。これが麻薬性鎮痛薬です。麻薬といっても癖になることはありませんのでご安心ください。モルヒネが体に広がって鎮痛効果を発揮するまで1時間待ちます。それからUAEが始まります。前もってモルヒネを入れておかないとすぐには効き目が現れないので強い痛みを経験してしまうことになります。UAEが終わると子宮では直ちに痛みが始まりますが、もうモルヒネの効果で出てきていますのでその痛みはほとんど感じません。麻酔といっても意識はあり、会話もできます。眠らせて欲しいという患者さんもおられますが、UAEの途中では撮影があり、息を止めてもらわないといけないので、眠らせるわけにはいかないのです。でも少しは眠いです。うとうとしている感じで、話しかけると会話はできる感じの状態です。

UAEが終わると回復室に移動して3時間の安静時間となります。モルヒネの点滴は一定速度で続いています。痛みがあれば適宜モルヒネを追加します。3時間が経ったら病室に移動します。先に書いたように痛みは24時間くらいかけて強まって行きます。それに負けないようにモルヒネも一定速度で入れ続けて痛みを追いかけ、痛みを上回る鎮痛効果が出るように量を調節します。当院ではPCAという麻酔の方法を使っています。PCAとは患者さんが痛みを感じたときに自分で麻酔のボタンを押すだけで麻酔を追加できる装置を使った方法です。むやみに押しても決められた量の麻酔しか入りませんので、ご安心下さい。痛いときにスタッフを呼ばないと痛み止めが追加できない方法だと、人が来るまで痛みに耐えなければなりません。PCAはその問題を解決してくれます。もちろんスタッフは頻回に訪室して麻酔が足りているかの確認をします。

1日目の水曜、2日目の木曜はずっとモルヒネの点滴が続きます。そして3日目の金曜になると、痛みは一般的な鎮痛薬で足りる程度に軽くなりますので、点滴は終了となります。1日目と2日目は麻酔の影響で眠気を感じる人が多いです。食欲もない人が多いです。人によっては吐き気があるので、食事は無理に勧めません。食事や飲水が嘔吐のひきがねになりますので、飲めそうな量、食べられそうなものをお出しします。食欲や食べ物の好みは人によって様々ですので、スタッフが患者さんに聞いて、できるだけ希望に沿ったものをお出しします。ゼリーかフルーツだけならなんとかという人もいれば、雑炊が食べられる人もいます。吐き気の程度には個人差が大きいです。3日目の朝になるまではベッド上でおとなしく過ごす人が大半です。なにより痛みを感じないですむ事が重要です。1,2日目は痛みは軽いですが元気もないので、これで退院できるのかなと思いながら過ごす人が多いです。3日目でも朝はまだ少しモルヒネの影響が残っていて元気とは言いにくいですが、昼から夕方にかけて急に元気が戻ります。食欲もでてきます。3日目の夕食にはしっかりとした食事を出しています。そして翌日の4日目の朝には元気に退院できます。排便がなくてお腹が張っている人もいます。排便が無いのはモルヒネによる腸蠕動低下のためで、漢方薬を飲んでもらって軽減をはかっています。4日目の土曜日午前には皆さんお元気に退院されます。念のために退院後に痛みがあったら使えるように鎮痛薬を持って帰って頂きます。

実は当院では2017年まで別の麻酔鎮痛方法を使っていました。硬膜外麻酔という方法です。背中に注射をして麻酔薬を投与する細いチューブを脊髄の手前に入れる方法です。腕から入れる点滴にくらべると大がかりだし技術を要します。この硬膜外麻酔はうまく効くととても良好な入院生活を送ることができるのですが、効き方にかなりムラがありました。麻酔が効く範囲が骨盤あたりを狙って狭いところに効かせるので、効き目の範囲と痛い範囲がずれていると、とても痛みます。過去のブログなどで患者さんが痛みでつらかったと書いている方には硬膜外麻酔が多いのではないでしょうか。当院でも硬膜外麻酔の効き方が不十分な時にモルヒネの点滴麻酔に切り替えることが時々あったくらいです。

私(田頭)が責任者になったのを機に、岡山大学病院麻酔科の意見を取り入れてモルヒネと解熱鎮痛薬の点滴を併用した方法に切り替えたのが2018年からです。以後は、2017年までとは全く違った患者さんの様子にスタッフ一同驚きました。硬膜外麻酔時代にあった、痛みがどうしても取りきれずに苦しむ人が居なくなったのです。患者さんがUAE後の痛みのことをあまり書かなくなりました。入院生活が苦しいと記憶も鮮明となり、ブログなどでの発信も盛んになります。2018年以後の患者さんがあまり発信されないのは、ある意味で悩ましいと感じています。原則的に1度しか受けない治療であるUAEの性質上、自分が経験した入院生活を他と比べることが難しいので、こんなものなんだなと思われるのでしょうね。痛みを覚悟して入院に来ましたが、予想と大きく違っていましたという声を2018年以降はよく聞きます。

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